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イーリー大聖堂を訪問

 FaceBook掲載記事の紹介です。
 その昔英国に住んでいた時、アフタヌーンティーに招待されてイーリーを訪れたことがあります。早めに行き、イーリー大聖堂を見学しました。今回はイーリーの話をしましょう。
 イーリーはイングランド東部ケンブリッジシャー州にある大聖堂で有名な町で、ケンブリッジの北東23キロのところにあります。イーリーという地名は、ウナギ(eel)と島を意味する-yまたは-eyから生じたといわれています。ここにはウナギがたくさんとれる島があったのです。今は干拓されていますが、昔このあたりは低地に広がる湿地帯で、ウナギが豊富に取れたといわれています。イーリー大聖堂は、「シップ・オブ・イーリー・アイランド(イーリー島の船)」または「フェンズの船」(the Fensはこの辺りの湿地帯のことで17世紀以降干拓された)と言われています。沼地に囲まれた中の壮大な大聖堂はあたかも船のように見えたのでしょう。
イーリー大聖堂の起源は、西暦672年に聖エセルドレーダが修道院教会を建てたときです。現在の建物は1083年にまでさかのぼり、1109年に大聖堂のステータスが付与されました。それまでは聖エセルドレーダ教会と聖ペテロ教会でしたが、その時点で聖大聖堂教 会として統合されました。
 建築的にガリラヤポーチ(玄関)と聖母礼拝堂はロマネスクスタイルで建てられ、聖職者席・聖歌隊席と主祭壇は豪華な装飾のゴシック様式で建築されました。最も注目すべき造作は、中央の八角形の塔で、上にランタン塔が乗っており、独特の内部空間を提供し、ウェストタワー(西の塔)とともに大聖堂の大きな特徴となっています。イーリー大聖堂は人気ある観光地で、年間約25万人の訪問者が訪れています。
 イーリー大聖堂は、ノーサンプトンシャーのバーナックから採石された石で作られています。建物の平面図は十字形で、西端に翼廊が追加されています。全長は164mで、75mを超える身廊は英国で最も長い身廊の1つです。西の塔の高さは66mで、ユニークなオクタゴン「ランタン塔」は、幅23m、高さ52mあります。内部の高さは43mです。
 イーリー大聖堂は近くで見上げるとさすがに大きく高い。入り口で入場料5ポンド20ペンスを支払い、大聖堂への入り口ウェスト・ドアから中に入りました。入り口の左手にパンフレットを置いた棚がありました。入り口から15メートルほど進むと、ウェスト・タワーの中に入ります。このタワーの下3分の2が12世紀の工事で、上3分の1が14世紀に追加されたとパンフレットに書かれています。床に迷路のような模様があり、床に描かれた迷路をたどって歩くと、その距離はウェスト・タワーの高さと同じ距離になります。つまり66メートルということです。
 ウェスト・タワーを進むと、ネイブ(身廊、会衆席)と呼ばれる大聖堂の中央部分の長い回廊に入ります。高い天井は左右11組の柱によって支えられています。回廊の長さは76メートルあります。入ったすぐ左手に大聖堂のショップがあり、記念品を買い求める人たちが、並べられた商品を眺めています。天井の装飾はたった二人の職人が描いたもので、カラフルにアダムとイブからイエス・キリストまでの歴史が描かれています。左の壁はステンド・グラスで、バイブルのシーンを表現しています。右手の寝ている牧師さんの像は、パンフレットには「スリーピング・ビショップ」と書かれています。長い回廊の終わりの右手に、もうひとつの入り口があり、これはサウス・ドアと呼ばれ、大聖堂の中庭に通じています。
 さらに進むと、その先に「オクタゴン(八角形)」と呼ばれるもうひとつのタワー(塔)があります。1322年に、ここにあった塔が突然崩壊し、そのあとにオクタゴンを建設しました。それまでの塔は、四隅の柱で支える塔でしたが、八角形のほうが丈夫なのでしょう。6年かけて石積み工事は終了しましたが、その上に200トンの木材、鉛、ガラスで造られたランターン・タワーと呼ばれる上の部分を作るのに14年の年月を要しました。下から塔を見上げると、八角形のそれぞれの角から他の角に線が引かれ、八角形の星のような模様が美しい。天窓から差し込む光が輝いています。
 オクタゴンの先に進むと、合唱隊の席が左右に設けられています。その奥が大聖堂の東の端で、そこに主祭壇があります。金色に輝くゴシック様式の祭壇で、複雑な彫刻を施した大聖堂のミニチュア版のような形をした祭壇です。ここに聖エセルドリーダの聖骨が納められています。祭壇は13世紀に作られました。手前に二本の高いローソクを両端に立てた長いテーブルが置かれ、白いテーブルクロスの手前に垂れ下がった部分に、赤と金色の糸で縫いこまれた菱形の華やかな模様があります。
オクタゴンの位置まで戻り、右に行ったところに「レディ・チャペル(礼拝堂)」があります。レディ・チャペルは大規模な礼拝堂で、大聖堂の本体の建物に付け加えられたもので、以前は独立した教会でした。レディ・チャペルへ行く途中に、小さなチャペルが3つあります。ウェスト大司教のチャペルとアルコック大司教のチャペルの間に、聖エセルドリーダにささげられたチャペルがあり、ここに白い大理石の聖エセルドリーダの立像が置かれています。
 レディ・チャペルは、聖母マリアのチャペルで、祭壇は比較的シンプルです。祭壇の前に8脚の長椅子が2列に並べられています。祭壇の後のステンド・グラスを太陽光が通りぬけ美しいカラフルな影をチャペルの部屋に落としています。イーリー大聖堂の総面積は、4273平方メートルあるとパンフレットには書いてありました。
 イーリー大聖堂の雄大さと厳粛な雰囲気に圧倒されて外に出ました。
 さてここで大聖堂の起源に深く関わっていた聖エセルドリーダについて説明しましょう。
エセルドリーダは、東アングリアの王アンナの4人娘の一人として紀元630年にニューマーケットの近くのエクスニングというところで生まれています。親も熱心なキリスト教徒だったので、エセルドリーダは、神が自分に宗教的な生活を送ることを求めていることを知っていました。しかし、政治的な理由で、エセルドリーダは2度結婚させられることになります。最初の結婚は、領土を接する隣国の王子のもとに嫁ぎました。彼女は、結婚したものの、自分は神に仕える身であると固く心に決めていたので、純潔を守りとおしました。この夫は、彼女にイーリー島を与えました。結婚して3年目に夫は莫大な財産を残して死にました。
2度目の政略結婚の相手は、やはり近くの王国の王子で、結婚したとき夫は15歳年下でした。エセルドリーダは、やはり純潔を守りとおします。結婚して12年目に、夫は普通の夫婦の生活を求めましたが、彼女は夫のもとを去りイーリー島に逃げました。これは673年のことでした。そして現在のイーリー大聖堂のある場所に、僧侶と尼僧のための2つの修道院を創設し、最初の女性の修道院長になったのでした。
 679年6月23日にエセルドリーダは喉頭腫瘍で亡くなり、修道院の庭に埋葬されました。6年後の695年10月17日に墓は開けられ、彼女の遺体はサクソン教会に移されました。歴史家によると、彼女の遺体はほとんど腐敗することもなく、喉の腫瘍も癒されていたそうです。奇跡が起こったのかもしれません。
エセルドリーダの修道院は、200年にわたって大変栄えましたが、デンマーク人の侵略によって破壊されました。その後970年にベネディクト教団によって再興されました。
 現在の大聖堂の工事は、11世紀に始められました。修道院の教会は、1109年に大聖堂になり、隣接するリンカーン教区から分離して、イーリー教区が作られました。1539年ヘンリー8世の国教会樹立と修道院廃止令により、廃止されてしまいます。イーリーは、他の修道院ほど徹底的に破壊されたわけではありませんでしたが、彫像、浮き彫り、ステンド・グラスなどが破壊され、聖エセルドリーダの聖堂も破壊されました。1541年に大聖堂は再建されます。1839年に2回目の復旧工事が始まり、3回目の工事は1986年に開始されました。こうして現在の形になりました。
 イーリーのハイストリートを少し歩きました。
 私はこの時の小旅行を英国ミステリー・シリーズ「マルコム・ブラウンの遺産(ケンブリッジ殺人事件)」(Amazon Kindle本)に描いています。
 
210818①大聖堂南東から望む
南東から望んだ大聖堂

210818②大聖堂東から
東から見た大聖堂(左が主祭壇、右が聖母礼拝堂)

210818③大聖堂西から
大聖堂の西正面

210818④八角塔外観
八角塔の外観

210818⑪⑤八角塔
八角塔とランタンの天井

210818⑥聖歌隊席
聖歌隊席

210818⑦ステンドグラス
ステンドグラス

210818⑧ネイブ
ネイブ

210818⑨主祭壇
主祭壇

210818⑩聖母礼拝堂
聖母礼拝堂

210818⑪聖エセルドレーダ像
聖エセルドレーダ像

210818⑪Highstreet 1
イーリーのハイストリート(1)

210818⑫Highstreet 2
イーリーのハイストリート(2)





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